こんな落ち着かない、毎日の中、久々に対面レッスンをしました。
曲はシャコンヌ、今第一線で活躍している私の生徒、ギタリスト達が若い頃勉強になるからと、義務付けた曲で、今でもコンサートで弾く人が沢山います。

レッスンした彼は、家にいる時間をフルに使って、練習したであろう成果は素晴らしく、とても上手くなっていました。
イエペス先生版を使っていますが、この譜面は、書かれている運指どうりに練習すると、この音楽の実像が自ずと、浮かび上がってくるし、基本練習としても本当に役にたちます。

私は18歳の時サンティアゴのセゴビア先生の講習会に行きましたが、その前年、イエペス先生がシャコンヌを引っさげてこの講習会に参加し、この時のすざまじいレッスンの模様は逐一皆んなの話題になっていました。
お二人とも自分の解釈、其れは運指に現れていますが、其れを主張し、喧嘩別れ、イエペス先生は次の日、マドリーに帰ってしまわれたそうです。
この件は私は恐くてイエペス先生に聞いたことがありません。

セゴビア先生のクラスは矢張り運指にこだわられるので、というか先生の運指で弾かないと機嫌が悪くなるので、1日が終わると、生徒達は一斉に自分の譜面に訂正を書き入れます。足りない譜面は回し回しです。

イエペス先生は1つの曲に3つ以上運指を付けることをいわれました。勿論左右ともです。
本当に頭を使うレッスンでした。

先生のシャコンヌは何回も聴いていますが、忘れえない思い出になったのは、マドリーの近くのセゴビアでのコンサートでした。
奥様とドライバーの方と四人で、私は着物を着ておいでと言われ、真ん中のよい席へ、なんとも精神性の深い演奏で、時が止まって、我にかえったときにはシャコンヌは終わっていました。
水道橋の側のレストランで、鰻のオリーブ油煮他をご馳走になり、帰りの車の中ではご機嫌のイエペス先生のフラメンコ大会です。鼻に少しかかった頼りない声でずっと唄ってらっしゃいました。

fbで戸田恭敬さんがイエペス先生の暗譜の事をかいてらっしゃいます。
こんな事がありました。羽田から札幌の飛行機のなかで初見の「中国地方の子守唄」を暗譜して、到着後すぐのコンサートのアンコールで弾いたと父のメモに残っています。
目もお悪かったのもある所為か
、譜面にじーっと眼を凝らしてらっしゃる姿は、頭の中で今何が起こってらっしゃるのかなと、いつも思ってました。